2015年02月20日

看板女優89歳、平均年齢75歳の高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」のドキュメンタリーを観る。

BSでたまたま観た。
蜷川幸雄が主宰しているさいたまゴールド・シアターの『鴉(からす)よ、おれたちは弾丸(たま)をこめる』のパリ公演成功までのドキュメンタリー番組だ。

さいたまゴールド・シアター@.png
蜷川幸雄とさいたまゴールド・シアターの団員たち。

ただの劇団の話ではない。
最高齢88歳の看板女優を中心とした平均75歳の劇団である。10年前に蜷川監督が、演じる主体、演劇の発信者としての高齢者という視点で作った劇団だ。それから10年経ち、俳優たちはそれぞれに年齢を重ねたが、生きるエネルギーは凄まじい。セリフは覚えられない、スムースな動作が難しい、耳は遠いとそれぞれに老化はみえるが、そういうのはどうにでもなると監督はせせら笑う。問題なのはどのように演じるかということ。「年齢を重ねた人々が、その個人史をベースに、身体表現という方法によって新しい自分に出会う場を提供する」というのがコンセプトである。

施設にいるにせよ、自宅で暮らしているにせよ、残った人生を数えるような生活を送っている高齢者をみている私にとって、それはまるで違う高齢者の世界だった。老いの象徴である白髪は、エネルギーを持ちぼうぼうと逆立ち、しわがれた声に力が漲る。皺の多い腕から突き出た拳には若さとはまた異なる生命の力がある。

看板女優である重本恵津子はパリ公演で89歳の誕生日を迎えた。彼女がさいたまゴールド・シアターに入団したのは80歳を過ぎ、そろそろ経営していた学習塾をたたもうと思って時だ。若い時になりたかった女優になれるかもしれないと応募したという。80歳で新しい世界の階段に足をかけることはなかなか難しい。年だから、世間の目があるから、家族に叱られるからと自分に手枷足枷をかけて動けなくなるのが日本人的発想、高齢者的発想である。しかし、重本恵津子は違った。なにしろ大正生まれで、子育てをしながらロシア文学を学びたいと37歳で猛勉強の末、早稲田大学に合格し大学院で修士号を取得したような人だ。入学したのが昭和42年のことである。今より女性の規範がずっと厳しい時代だった。やりたかったらやるというのが重本恵津子という人間だった。

彼女は弱った足腰を鍛えるために散歩をする。呼吸をするのも辛い時がある。それでも舞台に立つ。パリの舞台に立つ。いやはや見事である。生きることは闘いだと教えてくれる。

無題.png
看板女優の重本恵津子(左)。「私の股間にキスをしなさい」と詰め寄る場面である。

私の中でこれまで高齢者は肉体的にも精神的にも弱者だった。守り、助ける無力な存在だった。だから自分が高齢になることは恐怖だ。私の周りの高齢者は私に弱さを教えてくれた。しかし、さいたまゴールド・シアターの俳優たちは違った。弱さとともに死ぬまでどうやって自分らしく生きるか、受け取ることではなく、どうやって発信していくかというメッセージをくれたのだ。ブラボーな番組だった。

saitama.png
『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』のポスター
あらすじ
 二人の青年が、チャリティーショーに手製爆弾を投げ込んだ罪で裁判にかけられている。そこに、その青年たち(孫である)を助けようと、爆弾、ほうき、傘、三味線、物差し等々の武器を持った数十人の老婆たちが裁判所に押しかける。看守を爆殺したのち、老婆達が法廷内を占拠、自分たちの手で、逆に検事らを裁判にかける。警察による強行突入の警告が流れる中、検事や、助けに来たはずの青年にまで、次々と死刑宣告をする老婆たちだが――。
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posted by 雪あらし。 at 19:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 観たり聞いたり。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
雪あらしさん、こんばんは^_^
凄い!!パワーがポスターからも伝わってきますね。
一度観劇したいと思いました(*^_^*)
私も頑張らなきゃいけないなぁ♪
Posted by 赤鯉 at 2015年02月20日 19:56
★赤鯉さん、こんばんは♪

劇団員の前職は自衛隊のパイロットや大学職員や化粧品アドバイザーなどなどさまざまでした。
最も大変そうなのは、セリフ覚えで、覚えては忘れるを繰り返していました。
それでも皆さん、年のせいにはせずに黙々と練習していました。
ある人は一人暮らしのマンションなので、バケツを顔に被せて音を漏れないようにしていましたし、ある人は高架下で大声で叫んでいました。
なによりそれぞれが個性的でした。
何事も自分で限界を決めたり制約していてはだめなんですね。
初めて高齢者と友人になりたいと思いました。
この人たちからいろんな話を聞きたいなぁと思いました。
魅力的な俳優揃いです。
私も是非とも観劇したいものです。
(●^o^●)
Posted by 雪あらし。 at 2015年02月20日 21:15
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