2015年03月04日

桐野夏生著『緑の毒』 / 思い出す介護業界最底辺医師のプライドとコンプレックス

緑の毒 (角川文庫) -
緑の毒 (角川文庫) -

医者が嫌いだ。医療界、介護界のヒエラルキーの頂上に君臨する横柄な彼らが嫌いだ。同じ病院で働く医療事務員や受付や検査技師や薬剤師を同僚とも思っていないし、看護師でさえそう思っていないだろう。傲慢な奴らが嫌いだ。

介護施設での医者の横暴はもっとひどい。経営者だったりすると絶対王政を敷き、どの職員もどの職員も王様の顔色を伺いながら話しを進めていく。思い通りにいかないと声を荒げるし、幼稚な手合いになるとファイルを投げたり暴言を吐いたりする。意思の疎通とか連携とか相互理解という言葉は彼らの辞書にはない、というか始めから辞書なんて持ってない。他者は下手に出て当然だと医者は思っているし、職業威信を刷り込まれたこちらもそう思っている。

意外に知られていないが、医者の世界にも格差がある。序列の上にいるのが国立大学の研究者、臨床医師である。次に公立の勤務医となり、開業医は「開業医になっちゃおしまい」と言われる存在である。この小説の主人公の川辺はそんなヒエラルキーの下部に位置する開業医である、そして妻カオルは自分より格上の公立病院の勤務医で、妻の愛人玉木もまた同病院の腕の良い救急医である。川辺は医者という肥大化したプライドと新設医学部卒開業医というコンプレックスの間で次第にマグマのような怒りや不満を膨張させていく。爆発寸前である。

川辺は爆発しないために、時々ガス抜きを行う。それは一人暮らしの若い女性の部屋に忍び込みレイプすることだ。その特徴ある医者ならではのレイプのやり方を手がかりに、被害者女性たちは徐々に川辺を追い詰めていく。法的な手段をとらずに、今日的なネットを利用したやり方で破滅に向かわせるのである。

さて、昨今は開業医よりも更に下部に位置する医者が存在する。それは介護施設の医者である。福祉業界で信念をもち高齢者医療のために懸命に働いている医者も知っている。しかし、中には他の病院で使いものにならなかった医者、親の施設を受け継いだという医者もいる。こういう医者と一緒に働いたら大変だ。川辺のようにプライドを持ちながら、医学界と離れた介護業界にいるというコンプレックスでとにかく荒れる。そして威張る。虚勢を張るのだ。「慶応のヤツラは馬鹿だからさぁ」と言われてもコチラは苦笑するばかりである。川辺のような医者は多いのである。

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posted by 雪あらし。 at 10:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 趣味は読書なのである。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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